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2024年11月29日/274号 出た「資本コストや株価を」の悪例集
11月最終稼働日になりました。2024年も12月を残すのみ。いつも怒涛のように過ぎていく12月。気がつけば仕事でも、プライベートでもやり残しが散見され、へこむこともしばしば。そんなことはないですか?それを踏まえて、あえて11月に前倒しでやったのが掃除です。大掃除ほどではないですが、小掃除くらい(笑)。
15年くらい前のデフレ全盛期にイケア(時々、ノキアと言ってしまうのは私だけ?)で購入したイスとオットマンの廃棄を思い切ってやりました。実はイスとは名ばかりで、買って早々に洋服や雑誌、時には書類の置き場と化し、座った記憶がほぼありません(汗)。このままではイスの機能を果たさずに朽ちていくのみ。そこでエイヤ!と捨てることを決めたのが10月。大田区の場合、まず粗大ごみ処理券を取扱所で買い、それからネットで収集日を予約します。3週間くらい先になるのが常で、今回もそうでした。
廃棄後に部屋がこんなに広かったんだ、と感動することしきり。今後、二度と余計なものは置かないようにと妻からのお達しもあり。それにしても以前は、イスとオットマンの両方合わせ6千円程で買えたのが、今やイスだけで1万円にもなっている。デフレは遠くすぎにけり。
さて、メルマガ272号(10月21日付け/プレゼン資料と田中一村)でお伝えしていた東証の資本コストや株価を意識した経営に関する悪例集が11月21日に公表されました。既に目を通された方もおられることでしょう。悪例集という言い方はさすがにしておらず、正確には「投資者の目線とギャップのある事例」として公開されています。
こちらです
使い方は2ステップで進めるよう設計されています。ステップ1は、東証が実際の開示例を元に作成した事例(いわゆる悪事例に相当)が、皆さんの開示している「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の内容に当てはまらないかを確認するところからスタートします。東証が作成した事例は、レベル1~3に分かれているのですが、それぞれの内容や事例数は以下のようになっています。
レベル1:現状分析や取組みの検討が十分でない、5事例
レベル2:現状分析や取組みの内容が投資者に評価されていない、8事例
レベル3:投資者から一定の評価を得たうえで、更なる向上が求められる、5事例
例えば、レベル1は『当社では、中長期的な企業価値向上に向けて、202✕年度にスタートした第○次中期経営計画に基づき、取組みを進めております』というような過去に発表した中計等のリンクを提示するだけの開示で、中身を見ても資本コスト、資本収益性、市場評価を意識した検討が行われていないような事例があがっています。
レベル2は、『当社のROEは10%と株主資本コストを超過している一方で、PERは9倍と低く、PBRは1倍割れの水準で推移しています。PERが低い要因は、当社の事業に対する投資者の理解が十分でないことだと考えており、今後、IR活動の強化により、PERやPBRの向上に取り組んでまいります』といった事例。PERが低い要因を投資者の理解不足(=IR不足)と結論づけているが本当にそうであるのか。事業戦略や成長戦略を評価したのか否か不明であり、投資者にとっては収益の持続性や成長性に確信を持てていないことが要因であるかもしれず、本質的な課題分析が期待されるとしています。
レベル3は、更なる向上が求められる状況ゆえ、内容も<事業ポートフォリオの見直し><株主との対話の実施状況>に関する事例等をピックアップしています。
そしてステップ2は、本年2月1日に公表された「投資者の視点を踏まえたポイント」と題した資料の内容に大幅な追加記載がされています。
こちらです。
ステップ1で自社に当てはまる事例があれば、こちらの資料で検討・ブラッシュアップしてください、との建付けですが、頭から読んでいく必要はありません。ステップ1「投資者の目線とギャップのある事例」の資料に記載の該当ページへダイレクトに進んでください。そこには、解決の処方箋としてポイント、解説、他社取組例(新規の好事例の追加記載あり)が説明されています。
個人的には東証が口を酸っぱくして、しつこく(笑)言っているテーマゆえ、対象企業の具体的な行動へつながるよう、分かりやすい内容になっていると感じます。まずは上記URLをクリックして、内容に目をとおしてください。該当する箇所があればもちろんですが、そうでなくとも興味を引いた箇所を理解するだけでも役立つと思いますよ。百聞は一見にしかずです。
それでは、また次回!
11月に入って今年もあと2か月あまり。月並みですが、ほんとに1年はアッという間です。先週から3月期決算企業の第2四半期発表が始まっており、この2週間でピークを迎えます。いよいよ本番という皆さんは、体調を万全にベストのパフォーマンスをどうか発揮してください。
商店街にある理容室へ行きました。ご夫婦で経営されている、いわゆる昔ながらの床屋さんです。今回、席につくなり「急な話なんだけど12月いっぱいでお店閉めることにしたよ」と言われました。突然のことでどうリアクションしたらいいか固まっていると、聞かずとも話を続けて「ここの賃貸契約が3年でね、もう少しで終わるんだけど、更新しないってことで」「それにねぇ最近、(体が)つらいと感じるようになってね…」という。
10年来通っていることもあり、席につけば黙っていても仕事をしてくれるお店です。が、当方すぐ目を閉じて(眠って)しまうのが毎回のことゆえ、会話らしい会話はほとんどしたことありません。あらためて鏡に映るマスターの姿を見れば、頭髪は白いけれど背筋はピッと伸び、シャキシャキと小気味よくハサミを使っています。手元は震えてない(笑)。現役を退くには早いのではと感じているのを察したかのように「俺もね82歳だからね」ときた。これには正真正銘驚いた。実年齢より少なくとも10歳は若いと勝手に思ってました。
「じゃぁ、お店閉めてどうするの?」と聞くと「コロナもあって、もう10年は帰ってないけど実家へ行くよ」と。マスターの実家は、確か種子島(鹿児島県)と聞いた記憶がよみがえった。話を聞いていた奥さんが「腕に衰えはまったくないんだけね…パンチパーマ(久しぶりに聞いた/笑)のできる理容師って今、なかなかいないのだけどね、それがキチンとできる貴重な人で、遠くからも来てくれる人もいるのよ」とだんなさんへの誇り、愛情や信頼いっぱいの言葉を聞いて、なぜだか胸熱になってしまった。そして、年内にもう一度行くことを誓ってしまった(商売上手!/笑)。
さて、本日(5日)から東証の立会内取引時間が延長されますね。その初日ということもあり何か起こっては困るのだけれど、何か起こるかもと気になってしまいます。延長は1954年に午後2時から午後3時へ変わって以来70年ぶりのこと。今回は取引時間が30分延長されて、終了時刻が15時から15時30分に変更されます。これで前場2.5時間と後場3時間の合計5.5時間の取引時間となります。投資家、企業にとって、それぞれ一番の注目点であろうところを見ていきます。
投資家にとっては、取引時間延長はシンプルに取引機会の増加につながるでしょう。ひとつ注意すべきは、終値確定について「クロージング・オークション」方式が導入されることです。3時25分から30分までの5分間は、注文のみを受け付けることになります。3時30分になった時点で売り注文と買い注文を一斉に突き合わせて最も多く約定する価格が終値となります。従来は、3時30分を迎えるまでザラバ方式により売り注文と買い注文が合致する都度、売買を成立させていました(30分を迎えて板寄せ方式により終値を確定)。
言い換えれば、取引終了直前の売買注文で終値を吊り上げたり、逆に引き下げたりする相場操縦ともとられかねないリスクが今までは存在し、疑いをかけられたくない(機関)投資家は大引け時の売買を見送るところが多かったと聞いてますが(クロージング・オークション方式の導入によって)それが軽減されることで、参加への背中を押されることになるでしょう。また、立会内取引時間延長に合わせて、立会外取引(いわゆる、ToSTNeT取引)の時間も30分延長されること記しておきます。
企業にとっては、一日の株価変動はやはり極力抑えたいとの考えから決算発表の開示時間をどうしようかというところが一番の関心事になるのではないでしょうか。取引時間30分の延長により、開示時間を午後3時30分以降に遅らせる予定の企業は、約3割あると日経は報じています(2024年4-6月期決算を午後3時~3時29分に開示した1,103社の回答による)。一方、開示時間を取引時間中へ早めると回答した企業はTDKやホンダ等、50社以上あったとのこと。
今回の立会内売買時間の延長は、まさに投資家や企業にとって「たかが30分、されど30分」の大きな変化に繋がるやもしれぬ変更です。じっくり見守っていきたいと思います。
それでは、また次回!