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2021年5 月31日/183号 驚異の0,02%
明日から6月、はや1年の折り返しです。とは言え、目にしたり耳に入ってくるのはコロナかオリンピックのニュースばかり。これが閉塞感へつながっているのでしょう。そんな中、27日(木)日経夕刊1面トップに「取締役2人脱炭素派から」という大見出しの記事がありました。
読まれた方も多いと思いますが、エクソンモービル(エリクソンモバイル、と言ってしまいそうなのは私だけ?(笑))の定期株主総会で物言う株主が推薦した取締役候補4人中、2人が選任されました。
ISSが推薦4人中3人に賛成票を投じるよう推薦していたとか、エクソンモービル株6%を保有する大株主のブラックロックが賛成票を投じたとか、CALSTRS(カリフォルニア州教職員退職年金基金)が「(エクソンモービルの)取締役選定は、世界のエネルギー転換を重視する米国の大企業第1号であって、最後ではない」とのコメントを出したとかが話題になっています。
が、いちばんの驚きはこれまで名前を聞いたことのない物言う株主の提案だったこと。エクソンへ物申すくらいだからカール・アイカーン、サード・ポイント、エリオット等のビッグネームに違いないと思っていると、エンジン・ナンバーワン(エンジンをエジソンて言ってしまいそう(笑))と言う少なくとも私にとっては初耳の投資家でした。ご存知でしたか?これに輪をかけて驚いたのが、エンジンの保有するエクソン株式数。どれくらいだと思いますか?
何と0.02%!
これもあって同社がどんな展開をしていたのかウェブサイトをのぞいてみました。
It’s time to Reenergize Exxonと題したキャンペーンが目につきます。早速、見ていくと4つの内容を挙げています(本来は英語原文がいいのでしょうが、我流和訳させていただくと以下のような意味合いかと)。
取締役会のリフレッシュ
我々は、能力があってエネルギー業界での成功実績を持つ独立取締役によってエクソンモービルの取締役会をリフレッシュします。我々のキャンペーン前には社外のエネルギー業界で経験を持つ独立取締役のいなかった取締役会を業界のダイナミクスに応じて成功裏に収めるよう支援します。取締役会は、我々のキャンペーンを追い払うため3人の新しい取締役を加えましたが、(3人は)どなたもエネルギー業界での成功体験や変革的経験を持っておらず、そのうちの2人はエネルギー業界での経験が全くありません。
長期的資本アロケーションの規律を課す
損益分岐となる石油・ガス価格の低減を含み、新しい資本支出に対してより厳しい承認基準を適用します。これは、エクソンモービルが過去10年間のいただけない資本アロケーションで17兆円以上の株主資本を毀損したことを考えると、たいへん重要であると考えています。ウォール・ストリート・ジャーナル誌が指摘したように、エクソンモービルはコロナ前の2019年にフリーキャッシュフローのみからでは配当原資を得ることができませんでした。
持続的な価値創造のための戦略的計画を実施
我々は、クリーンエネルギーにおける価値ある投資を含み、変化を続ける世界で成長領域を十分に探究します。コマーシャルオペレーションの最適化を図ると同様、排出量削減目標へのコミットメントで利益につながるような多様化を確実なものにします。これらの機会を検討するにふさわしい取締役会の助けを受けて。フォーブス誌が指摘したように、エクソンモービルは炭素移行をナビゲートするための包括的戦略をまったく打ち出していません。我々は、これは長期的な株主価値に対する根本的な脅威であると考えています。
役員報酬の点検
我々は、株主価値創造とインセンティブを従来よりも一致させます。エクソンモービルCEOダレン・ウッズは、最も近しい競合他社とS&P500(68%上昇)の両方にアンダーパフォームして、時価総額が20兆円ほど下落したにもかかわらず、2017年から2020年の過去4年間で75億円もの報酬を得ています。
さて、一読して皆さんはどんな感想を持たれましたか?私は、正直もっとESG指向の強いメッセージを想像していました。が、さにあらず。この点においても驚くことになりました。根本には、環境対策への不十分な対応があるからでしょうが、要は同社の業績がすぐれず株価が低迷していることにつきます。外部取締役の選任、持続可能な成長戦略策定、役員報酬見直し等々、いずれもどこかで聞いたことのある提案ばかりです。
明日から6月、IRにとっては繁忙期を締める重要イベントである株主総会の月。これから総会対策など今さら感は強いですが、足元をすくわれない為にも基本事項のおさらいとして、上述内容に対する会社施策などを再度点検しておくことをお薦めします。それでは、また来週!
2021年5 月26日/182 号 経済センサスやってみた
メルマガ181号(5月21日付け、別れることはつらいけど)へメッセージいただきました。ありがとうございます。
『(前略)今回つくづく思ったことですが「隠したりウソをついたりせず、オープンでまっすぐな姿勢・態度は必ず好感を持たれる」ということでした。板倉さんのクライアントさんも素直な会社さんなのですね。私どもも、多くの会社さんをお相手させていただいていますが、相手先に、外部の意見を受け入れようという姿勢があるかないかによって手ごたえが全然違います。
当然と言えば当然ですが、外部の意見に耳を傾ける会社は必ず伸びますね。板倉さんのクライアントさんの今後の成長に期待しています!ちなみに、ガッキーショックとは無縁に、私の保有している銘柄は、昨日年初来高値を付けていました!』
突然ですが、クイズです。東京、大阪で全国1位の産業は次のうちどれでしょう?
◆東京/事業所数が全国1位は?
① 石鹸・合成洗剤製造業、②アルミ・アルミ合金プレス製品製造業、③米菓製造業
◆大阪/事業所数・従業者数が全国1位は?
① 部分肉・冷凍肉製造業、②家具製造業、③生菓子製造業
答えは、東京=②(150事業所)。大田区・墨田区・足立区などにはガッツリと町工場が存在しているということでしょう。まさに東京の下町ロケットの世界。大阪=②(726事業所、10,189人)。①か②で迷いました。枚方家具団地のイメージどおりなのですね。
これらはいずれも「平成28年経済センサス 活動調査」結果に基づいたものです。意外な産業が全国1位だったりします。関心ある都道府県をクリックしてみてください。
http://e-census2021.go.jp/quiz/
令和3年経済センサス 活動調査への回答依頼がありました。5月GW明けに1枚の葉書が届いたのがスタート。裏面には小池都知事の名前&印章がありました。印章は、東京都知事と記されたもの。もちろん印刷ですが朱色で、(印の)サイズもドーンと目立つ大サイズ。小池さんの好みなのか、お役所の前例踏襲なのか知らないけれどとっても権威主義的なものを感じてしまった。
これに次ぐ第2ステップでは、調査員からの訪問がありました。葉書にその旨が記されていたので驚きはしません。避けていたわけではないけれど、1回目、2回目は当方外出中。3回目の訪問でインターホン越しに話をうかがいました。話といっても、回答はインターネットで行いますということと、調査用紙は宅配ボックスへ入れておいてくださいということを伝えたにすぎません。この程度のことなら電話やメールでやり取りすればもっと効率的なのにね。
と思っていたら、ディア・マスターズのように支社などのない単独事業所には、調査員が訪問して直接配布することになっているそう。次のマンガを読んで対象企業やそもそもの目的、回答は義務であることなどがよくわかりました(笑)。
https://specialcontents.yahoo.co.jp/e_census2021/answer/
実際の調査内容は18項目あり、会社概要と業績に関するものに大別できます。初めてということもあり手間取ってしまい回答を終えるまで30分ほどかかりました。調査内容に変更がなければ次回から半分以下の時間で済ますことができると思います。要はさほど手間のかかる調査ではありません。
前回(平成28年6月実施)の結果概況によれば、全産業、及びディア・マスターズの属する産業大分類(=学術研究、専門・サービス業)の売上高と付加価値額は以下のとおりでした。ここでいう付加価値額は、売上高-費用総額(=売上原価+販管費)+給与総額+租税公課にて算出されています。
全産業売上高 1,624兆円(平成23年比+22%)
同付加価値額 289兆円(同+18%)
学術研究、専門・技術サービス業 42兆円(同+44%)
同付加価値額 15兆円(同+42%)
全産業付加価値額の対売上比率は約18%、学術研究、専門・技術サービス業のそれは約36%です。ディア・マスターズは、どうなんだろうと期待半分・不安半分で計算してみました。結果は、産業大分類比率をクリアしておりホッと胸をなでおろした次第です(笑)。データの元になった学術研究、専門・技術サービス業の企業数は189万社でした。今回調査ではディア・マスターズも新たにその1社としてカウントされるわけですが、最新結果では果たしてどうなのか楽しみに待ちたいと思います。それでは、また来週!
https://www.stat.go.jp/data/e-census/2016/kekka/pdf/k_yoyaku.pdf
2021年5 月21日/181 号 別れることはつらいけど
「逃げ恥」の新垣結衣・星野源のお二人が19日(水)に結婚を発表しました。今年1月放送の「逃げ恥」特番撮影での再会がきっかけだったそう。明るい話題に乏しい今日このごろですが、めでたいめでたい。人気の俳優・歌手から前触れなく結婚発表があったりすると○○ショックとか言って、株価が荒れることがありますね。不思議なアノマリーです。女優さんで日経平均への過去例を調べてみると…確かにあるある。
堀北(真希)ショック/2015年8月22日発表、▲895円(▲4.6%)
北川(景子)ショック/2016年1月11日発表、▲479円(▲2.7%)
石原(さとみ)ショック/2020年10月1日発表、NA ( ― )
NAなのに、なぜ石原ショックなのかと言えばご記憶の方も多いでしょうが、東証システム障害により10月1日は終日の売買停止となったからです。すごっ(驚)。だから昨日(20日)の日経平均には注目していたのですが、+54円とおとなし過ぎる展開で引けました。とは言うものの、ガッキーレベルになると時差攻撃があるかもしれず(笑)、週末となる本日(21日)の日経平均には要注意!
2年間という長い間お付き合いいただいていたクライアントとの最終回のセッションが今週ありました(涙)。コロナの影響で対面に代わり、オンラインを採り入れながら対応してきましたが、最終回は先方オフィスへおじゃまして、全員顔を合わせてのセッションでした。依然、テレワークがメインで、オフィスはひっそりしてるだろうな~と思って行くと、さにあらず。応接室やミーティングルームのそこかしこから、恐らく来客とでしょう、熱っぽく打合せする声が聞こえてきました。コロナ発生の際には、本社機能を東京外へいち早く分散させたのですが、逆にこの春からは、以前のように東京へ集約されたそう。オーナー系の会社ならではの素早い動きが良い方へ効いているようです。
クライアントの社名をお伝えできず残念ですが、東証1部に上場されており、経営企画部内にIR機能を持たせています。IR実務は1.5~2名で対応されている状況。2年前と比べると時価総額は2倍強の700億円まで上昇(同期間の日経平均は、4割弱の上昇)。時価総額の増加は、取材件数の増加からもうかがえます。お付き合いいただく前、年間の取材件数は40件程度。それが足元では年間100件ペースまで上がってきています。忙しくされているのは間違いないのですが、いわゆる後ろ向きな忙しさとは別物で、前を向いて進んでいる忙しさを満喫されています。少し長い目で見ると、今後のIR人員・体制をどうしようかという域に近づきつつあるのは間違いのない所でしょう。
最終回、フィードバックとしていくつかお言葉をいただきました。
*IRの「いろは」から教えてもらい、特にバイサイド対応ではその知識が役立ったと感謝しています。
*某バイサイドとの取材後、「臆することなく」とのアドバイスに従いフィードバックをお願いするとESGに対する貴重なコメントを入手できた。
*社内に対して成果アピールが難しいIR業務で(社内アピールの)ヒントを数多くもらい、効果が上がっている。
*会社のIR方針に取り組み内容が左右されてしまうことがあり残念に感じることがあった。
率直なメッセージに身の引き締まる思いです。このクライアントに限りませんが、いい意味で変化が生じているクライアントに共通していることを考えると、だいたい次のような点かなぁと感じます。①ディスカッションした内容を必ず行動へ移している(一気に全部でなくとも、スモールスタートも含めて)。②疑問・不明点はどんなささいなことでも(ディア・マスターズへ)確認する。③「業績は最大のIR」であるというスタンスをどんな時も忘れない等。
次に克服したい・すべき複数課題も明確に把握できており、私としては引き続いて伴走したい気持ちはやまやまなれど、ここは一旦自走するとのクライアント判断を尊重する時。経営トップからの強い方針でもあり。あぁ~まさに千昌夫の名曲「星影のワルツ」の心境だぁ。
別れることはつらいけど
しかたがないんだ君のため
別れに星影のワルツを歌おう
冷たい心じゃないんだよ
冷たい心じゃないんだよ
今でも好きだ死ぬほどに♪
次なる目標、時価総額1,000億円の実現に向けてガンバレ~。心から応援してます!それでは、また来週!
2021年5 月10 日/180 号 男性更年期に注意だって
4月末からご無沙汰してしまいましたが、ゴールデンウイークはどう過ごされましたか?緊急事態宣言が発出され予定変更を余儀なくされた方もおられるのでは。私は、予約していたレストランからキャンセル依頼が入ったり、セミナーの延期連絡が入るなど影響がありました。が、どちらも予想していたことなので「仕方ねぇなぁ~」と思いつつ、歩いて行ける範囲内でほぼ毎日を過ごしました。
家の中では、テレビ・ビデオ・読書の三本柱が中心。今年に入り連続もののビデオを見る方に時間を取られてしまい読書量が激減していたので意識的に読む時間を作りました。読みかけも含めて5冊というのは、頑張ったほうだと思います。
(1) 13歳からのアート思考、末永幸歩、ダイヤモンド社
(2) 還暦からの底力(歴史・人・旅に学ぶ生き方)、出口治明、講談社現代新書
(3) 一勝九敗、柳井正、新潮文庫
(4) 投資家が「お金」よりも大切にしていること、藤野英人、星海社
(5) EXIT、相場英雄、日経BP
この中では、13歳からのアート思考がおもしろかった。最近、アートを理解するにはそれなりの知識や時代背景理解などが必要と説明する本が話題になっています。本著は、その前段にあたると思うのですが、まず作品を見て、自分なりの視点でとらえるにはどうしたらよいかを実際の作品を例に手ほどきしてくれます。
家の外では、2つしました。ひとつはスポーツジムを再開。スポーツジムは昨年3月に休会届を出して以来なので、1年2か月ぶりになります。さすがにこれだけ通っていないとちょっとした浦島太郎状態になります。まず、受付。従来の会員証をカウンター上に置かれたセンサー読み取り機へピッとする方式に代わっていた。入退館で人が滞留することなくとてもGood。受付担当をしていた人も他仕事ができるので生産性向上している(風にはあまり見えなかったが…)。館内へ入ってみると、プール、ジム、エアロビクスでは特にコロナ前と違いはありません。とは言え、3つ全部を行う気力・体力はとてもないので、もっぱらプール利用です(笑)。プール利用者の中にはマスクしながら入っている人がいるのには驚いた(泳いでいる人ではなく、水中ウォークしているおじいちゃんやおばあちゃんたち)。水泳後、サウナに入るのがお楽しみのひとつ。でも、緊急事態宣言下ということでクローズ中でした。サ道(=サウナ道)にはまるほどではないけれど、あの爽快感が得られなかったのは残念でならない。
もうひとつは、4月9日付けメルマガ177号(農業デビュー!)で書きましたが、区民農園での農作業です。4月初めに土づくり、中旬に畝づくり、下旬から5月初めに種苗植え付けを行いました。我が家の畝はコの字型。そこへナス、トウモロコシ、芽キャベツ、枝豆、エゴマ(シソ)、モロヘイヤを植えました。ナスだけが苗で、他はすべて種からの育成です。だから発芽してある程度育ってくるまで畝の見た目は寂しい感じ。
5月初めにはこんな感じで、最初に種を植えたトウモロコシが芽を出しました。恥ずかしそうに挨拶しているようで微笑ましい。
一週間後には、もうこんな感じで成長期に入った感じ。あと数センチ背丈が伸びた頃、間引きを行う予定。
苗から植えたナスはさすが生育がよく、はやくも花が咲きました。枝葉が混んできたところで整枝を行います。
5月8日付け日経土曜日版、カラダづくりの紙面に「男性更年期に注意」の記事があり、思わず見出しに引かれて読んでしまいました。セルフチェックリストがあって10項目あがっています。
1.性欲が低下した
2.元気がない
3.体力(持久力)が低下した
4.身長が低くなった
5.毎日の楽しみが少ない
6.もの悲しい、怒りっぽい
7.勃起力が弱くなった
8.運動能力が低下した
9.夕食後のうたた寝してしまう
10.仕事がうまくいかない
私と同世代の男性メルマガ読書の皆さん、チェックした結果はいかがでしたか?3項目以上に当てはまると男性更年期の可能性ありとのこと。チェックの入った項目を個別に語るのは、はばかられますね(笑)。予防するには①食事ではたんぱく質をしっかりとる、②運動を習慣づける、③ストレスをためない、④異性と接する機会を持つことだそう。
私は更年期かどうかに関わらず、毎日の生活で続けること、止めること、そして新たに始めることについて考えるきっかけになりました。3月期決算企業のIR担当の皆さんは、最繁忙期で目先やるべきことが山積みになっていて、従来のルーティンを続けることを優先しがちではありませんか。それを頭から否定する気はありませんが、あえて止めてみたり、特にコロナで環境が変わった時ですから、新しいことを始めてもよいのではないでしょうか。どうか車のハンドルのあそびのような余白の部分を持ってこの時期を走り抜けてください。それでは、また来週!