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2017年6月27日/3号 株主総会のお手本
先週のメルマガ(巨人・ロッテ観戦記)への感想ありがとうございました。やはり、男性それもオールドな方からのものが多かったですね。
(1)東京ドームは日経225銘柄なのにアナリストカバレッジがほとんどないのが不思議だったが、説明会へ参加して謎が解けた。体質の古さがプンプン溢れていた。
(2)20年くらい前、ドーム球場を借りて、社内対抗の、野球をやったことを思い出しました。当時の職場に熱心な方がいて、朝10時から12時までグラウンドを借りて、私もマウンドから何球か、投球練習をさせていただきました。
(3) あの年齢でも変化・進化する(考え方も)のが永守さんのすごさなんでしょう、と思います。
(4) 東京ドームのお酒などで儲けるビジネスモデルは確かに面白いですね。ただ、独禁法の観点からは問題ないんですかね?飲み物などがもっと安くなれば、より球場に行きやすくなり、野球人気はさらに上がるかもしれないなどと思いました。チケットは取りにくくなるかもしれませんが
今回は、株主総会です。今週29日が集中日で、3月期決算上場会社の31%にあたる380社が開催するそうです。かつて総会は、おおかたの企業にとって年1回の儀式でした。厳かに粛々と進行して、最後にシャンシャンと終わることがすべて。それが2000年くらいから「開かれた総会」「株主との対話の場」へシフトしていきました。総会屋活動の沈静化、持ち合い解消の進展に伴う個人株主の安定株主化、企業ガバナンスの強化等が、その理由としてあげられます。
今年は、バイサイドにおける議決権行使の個別開示が話題になってますね。公的年金が、開示徹底を求めて、プレッシャーをかけているとの報道もあります。あるバイサイドの方は「(社内に)行使担当部署があればいいけれど、うちはないから(運用と)兼務が必要。だから、たいへん!」と嘆かれてましたね。
さて、小松製作所(コマツ)の第148回株主総会に出席しました。株主総会概要は以下。
<日時> 6月20日(火)10:00~11:45
<場所> 帝国ホテル(ビックサイトが東京五輪準備開始で使用不可になった)
<出席者> 発表無(会場、孔雀の間のキャパは、1,200名以上)
<タイムスケジュール>
9:50~ 会社紹介ビデオ⇒災害発生時のアナウンス
10:00~ 開会宣言⇒監査報告⇒事業報告⇒対処すべき課題⇒議案説明
10:40~ 質疑応答
11:40~ 採決⇒取締役紹介
11:45~ 閉会
会社紹介ビデオは、普段事務職の女性6名が大型建機を運転して整地。3日間で道路を作る内容。コンピュータールームから遠隔支援するのも女性でした。建機というと大きくてゴツくて、汗の光る男くさい世界というステレオタイプの想像が、(コマツの狙いどおり)一掃させられました。運転席からの見晴らしはかなりいいんだろうな。スピードってどれくらい出るのとか。興味津々で、機会あれば運転したいものです。
開会宣言から議案説明までは、肉声とビデオの両刀使いで、他社でも同じ方式を採用されているところは多いと思います。「やるな~」と感じたのは、肉声からビデオ、ビデオから肉声の切り替えを頻繁に行ったのですが、一度も株主にストレスを感じさせなかった点。私の現場経験からすれば、練習はするものの、どうしても間が空きすぎたりするものなんです。が、それが無かった。事務方が全操作をしているはずで、その方々のオペレーション能力の高さを垣間見ました。些末なことですが、意外にも来場者の満足度に影響を与えます。
質疑応答は「株主との対話の場」を体現してました。まず、株主質問の質が高い。9名から合計17個の質問がありました。代表的な質問を項目別に整理したのでご覧ください。プロの機関投資家が尋ねてもおかしくない質問がいくつか含まれています。
(1)ジョイグローバル(3,000億円で買収した米国鉱山機械メーカー)関連
*売上高の半分以上が石炭採掘向けだが大丈夫か?
*のれん代償却で今期、株主利益を圧迫するのはなぜ?
*ある調査でEBITDAが33倍とあった。高すぎないか?
*買収後のガバナンスは、どのような体制をしかれるのか
(2)社外取締役関連
*社外取締役に賞与を出すのはなぜか?
*奥(三井住友Fグループ取締役)社外取締役は7社兼務だが、多すぎると思わないか?
(3) その他
*株主総会で展示会がなくなった理由と代替機会の創出について
*スマートコンストラクションの今後展開と優位性について
*国際会計基準(IFRS)の導入予定はあるか?
一方、これらを受けた議長・管掌役員の回答も素晴らしかった。スライド説明が付随した形で、回答を極力行ってました。取締役ゆえ、関連事項に精通しているのは当然ですが、スライドを効果的に使い、視覚へ訴えることで理解度を見事に引き上げてました。一見、当たり前のようですが、ここでも事務方の能力の高さを再確認。何百枚と用意されているであろうスライドから瞬時に最適回答の一枚を選択して、投影することは簡単なことではありません。取締役との息もピッタリ合ってました(驚)。
来場した個人株主にとって満足度の高い総会であった理由は、ニワトリと卵になりますが、やはりコマツの日頃の地道なIR情報発信や活動が効いているのでは。そして結果として、啓蒙・教育を受けた株主の質が向上したり、質の高い投資家が引き寄せられた。今まで出席した株主総会では、間違いなくベスト総会のひとつ。他ベストは、もちろん日東電工です(笑)。なお、株主総会の模様は、7月上旬にウェブサイトへ掲載予定とのこと。ご関心ある方はどうぞ。それでは、また来週。
2017年6月20日/2号 巨人-ロッテ観戦記
先週のメルマガに感想をいただきましたので、ご紹介します。コメントやリクエストをいただくと、本当にうれしいですね。ありがとうございました!
(1) 採用面接時から(採用しようとしている人が)辞める時のことを考えて採用していた ことを思い出した。
(2) IR現場で役立つのは新地の「ホステス心得帖」である。
(3) (19)自分の功にこだわらない、のみ異質な印象。(検事にとって)自分への戒めと して心にとめておくという風に理解した。
(4)「お前、故郷のお母さんが泣いてるぞ!」くらい言ってIR担当から聞き出すことにした。
(5) 日経新聞の観測記事、四季報のアンケートと取材に対して、IR担当者はどのように対 応すべきかというメルマガが読みたい(IR支援会社)
今回は、プロ野球観戦記です。起業されてまもなく10年の先輩から16日(金)の巨人・ロッテ戦のチケットを譲り受けたので東京ドームへ行ってきました。中学生の時、修学旅行で遊園地を訪問して、その際に乗った観覧車から巨人の試合を7分間くらい見たことを鮮明に記憶してます。当時はドームではなかったのが幸いしました。後楽園(東京ドーム)を訪れるのは、それ以来でした。
試合内容をおさらいすると8-0で巨人の大勝。マギーがバカ当たり、投げてはマイコラス‐西村の完封リレーとワースト連敗記録を更新したチームとは思えない快勝でした(その後、18日まで3連勝といい感じ)。それを3塁側オーロラシートから観戦することができたので、興奮しないわけがありません。ロッテの涌井投手が目と鼻の先で肩慣らしをしているのですが、軽いキャッチボールとは言え、相手のミットに糸を引くように吸い込まれ、パチン・パチンとすごい音がしてました。
あ、私は巨人ファンなのでもちろん写真撮りまくりましたよ(笑)。たくさんの中からベストの数枚をピックアップしましたのでご覧ください。
いまだ興奮冷めやりませんが、少しクールダウンして何十年ぶりかのプロ野球観戦で感じたことを書きたいと思います。まず、球場ですが屋根なしから屋根ありに変わったことは先に書いたとおりですが、溢れんばかりの音と映像・光でしょうか。音響がいいのは認めるけれど、昔ながらのオールドファンは、静かに見たい時もあるのです。オールドと言えば、観客に同年代のオジサン連中が結構な割合でいました。隣にでもいたら、ビール片手に野球談議するのは間違いないところ。2人組女性も多くお見受けしました。とても慣れた雰囲気で観戦していて、点が入った時の約束アクションを率先して行ってました。あと、ビールの売り子さんについて、書かないわけにはいきません。若さ、元気、笑顔と三拍子そろって、まぁよく動くこと動くこと。聞けば、背負っているビールサーバーは十数キロもの重さらしく、足腰にガタがきつつあるわが身としてはうらやましい限り。
肝心の選手について。阿部や坂本選手はやはり「華」がありますね~。打っても打たなくても、打席に入って構えを見せるだけで絵になる。一方、初めて名前を知ったのが山本や石川選手。これからの活躍で輝いて欲しいところ。ロッテ側には涌井選手を除いて、知った選手が一人もいなくなってしまった。。。。。
驚いたことの最後は、日本電産が巨人のスポンサーになっていて「日本電産は読売ジャイアンツを応援してます」と大々的に宣伝してたこと。一体、いつの間に。日本電産のイメージと巨人のイメージがどうも一致しないのだけれど、皆さんはいかがでしょうか。
週末、東京ドームについて調べました。株式会社東京ドームが経営。東証1部上場(証券コード9681)で、ざっくり株価1千円、発行済株式数1億株で時価総額1千億円と覚えやすい数字の会社。売上高(約900億円)の8割弱を東京ドームシティ関連(ホテル、遊園地、スパも含む)が稼いでおり、その営業利益率は2割超の高収益事業でした。驚いた。が、わが身を冷静に振り返れば、ビール飲み飲み、弁当食べ食べ、少し休憩してからアイスを食べて、締めにハイボールと東京ドームの業績に大貢献してました(笑)。今回の経験から若い世代を取り込むことも大切でしょうが、それ以上にオジサン世代(野球にノスタルジーを感じる人が多いと思う)を取り込むことを検討されては、と強く感じた次第です。真面目にIR担当者に話を聞いてみたくなりました。それでは、また来週。
2017年6月13日/1号 検事の取り調べ技術とIR取材
起業して、早いもので3カ月がたちました。会社(日東電工)を辞める際に、多くの方々から激励をいただきました。あらためてお礼申し上げます。世界卓球(実は、中学と高校1年まで卓球小僧でした)でメダルをとった十代や二十代そこそのの日本選手達が、インタビューで「支えてくれた人たちに感謝したい」「次(東京オリンピック)は、もっと上の成績をあげて恩返しする」等、コメントをしていました。私はこの歳で、こういう立場になって、はじめて選手の言葉と同じ気持ちを持ちました。今は、この気持ちを失うことなく持ち続けたいと思っています。
この3か月間は、32年間の会社勤めのリズムから離れ、新しい生活リズムを作る時期でした。心は、切り替わった(かな?)と思えるものの、体は依然、毎朝6時過ぎには目が覚める状況。本日6月13日は、登記日が3月13日なので、正味丸3カ月が経過。これを機に、メルマガを発信すること決めました。前職でお世話になった方へは言うまでもなく、この数か月間で知り合い、おつき合いするようになった方、さらにこちらがそうなりたいと願っている方へお送りしています。1週間に1本を目標にして仕事ぶりや生活ぶりを報告していきます。不要な方はお手数ですが、ご一報をお願いします。
前置きが長くなりました。第1回目は「真実を語らせる/検事の取り調べ技術」のセミナーに参加して。最初に質問をひとつ。取り調べが難しいのはどれだと思いますか?(答えは最後に)
① 小中学生
② 会社員・役員
③ 外国人
④ 暴力団関係者
⑤ 住所不定・無職
⑥ 政治家・公務員
⑦ 法曹関係者
⑧ 女性
講師は、熊田彰英弁護士。弁護士になる前は、何と東京地検特捜部に席を置き、現場で数多くの刑事事件を処理されてきた凄腕の検事さん。ドラマ「HERO」のリーガルアドバイザーを担当されていた方。こんな経歴の方がどんなヒトであるのか、また「検事の取り調べ技術」のタイトルに引かれ受講。検事としての必要な能力や準備することをお話された後、いよいよ取り調べの具体的な手法を説明されました。
19個の手法をあげられました。
(1) 最初が肝心
(2) 目をそらさない
(3) 性善説を捨てる
(4) 抑え込もうとしない
(5) 焦らない(すぐに直球勝負をしない)
(6) {C}3度聞く
(7) 裏から聞く
(8) 飲み込みの悪い人間になる
(9) 自由に話させる
(10) 多くの矛盾を重ねさせる
(11) 変遷を見出す
(12) 同じ問いを繰り返す
(13) 相手を追及する側・評価する立場に置く
(14) 損得勘定させる
(15) 情報量の違いを認識させる
(16) 抵抗感を軽くする
(17) 雰囲気を変える
(18) 冷徹になる
(19) 自分の功にこだわらない
(3)性善説を捨てる。ヒトは、ウソをつくものだと考えているそうです。ヒトは都合悪いことは隠すものとも言われました。言われてみれば確かにそうかな。(5)焦らない。これは、よくわかります(笑)。(7)裏から聞く。これは「〇〇をしたか?」ではなく「〇〇をしていないと断言できるか?」という聞き方をすること。(8)飲み込みの悪い人間になる。相手に説明をつくさせることであり、先回りしたり・早合点しないこと。(17)雰囲気を変える。場所を変えたり、話の間をおいたり、口調を変えたりすること。
これら19個の取り調べ手法をIR取材で活用できるでしょうか。結論から言えば、いくつかは役立つかもしれませんが、基本Too Muchと思います。一番の理由は、被疑者に相当する(主に質問を受ける側だから)IR担当者が、取材では嘘をつかない善良な対応者として回答しているから。逆に言えば、取り調べでは被疑者が真実を言わないのが常であるから技術的・心理的な手法が必須で、19個もあるのではないでしょうか。
では、IR取材の要諦とは? 私は、サイエンスとアートのバランスだと考えています。このあたりの考えは、機会をみてお伝えしていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご意見・ご感想をいただければうれしいです。質問の答えですが⑤です(熊田さんの経験則によるもので、絶対的なものではありません)。失うものがないことは、強さに繋がるそうです。当方、⑦法曹関係者と考えましたが、これは相手が業界や手の内を理解しているがゆえ、逆に取り調べでは(検事側から)相手の立場・プライドを傷つけないようにどう助け舟をだそうかと考えるくらいだそうです。①の小中学生は、相手と同じ目線が持てれば問題なしとのこと。それでは、また来週。