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2021年1月25日/169号 「伝える」と「伝わる」の違い
懇意にしているバイサイドアナリストの方が、取材先企業を訪問され「まいったなぁ~」とのこと。この方は、丁寧な取材で定評ある方です(重箱のすみをつつくような質問をする方ではありません)。初見の企業に対しても事前勉強をきっちり行われます。そんな方がまいってしまう回答とは、どんなものだったのかお伺いしました。
X社:〇〇〇の維持費や管理費の方へコストがかかります。
⇒(アナリストの心の声、以下同じ)それは理解するけれど、一体どれくらいかかって
いるの?
X社: ○○○はどういう手順でやるのかなど、ソフト面のサポートを提供しています。
⇒たいていのことはネット検索できるし、ひと昔前ならお手上げになるような難しい問
題へもAI活用で対応できてしまう今の世で「ソフト面のサポート」とは具体的にどう
いうものなのか?
X社:ネットで〇〇〇選びをする人は増えている中、(当社ネットでの)成約率は30%です。
⇒成約率30%は低い気がするがそうではないの?また、残り70%の分析は?
また、以下のような回答も。
X社:(〇〇〇や✕✕✕等、大きな売上利益を生み出さないと推測されるサービス提供を行って
いることが短信に記載されていたので尋ねたところ)「私はもう十分に稼いでいますか
ら」(そういうサービスも提供しているのです)と言われたそう。
取材企業は東証1部、時価総額300億円、バリュエーションは十分すぎるくらい高い会社です。質問の回答者は代表取締役会長。残念なことにディア・マスターズのクライアントではありません。
想像してください。皆さんがバイサイドとして発した質問に対して上述の回答をもらったら、どう感じますか?私はこれをうかがい、会社が回答として「伝えた」ことは、必ずしも取材者へ「伝わる」とは限らない典型例であると感じました。取材者(=この場合、バイサイドアナリスト)へ「伝わる」ことがなかったのであれば、あえて厳しい言い方をすれば、取材としては失敗だったのでは。実際、アナリストの方は、モヤモヤが晴れず取材後、IR担当者へ再度確認をしてようやくスッキリできたそうです。両者にとってまさに二度手間でした。
なんて偉そうなことをいう私自身も同様のことが最近あったので懺悔します(笑)。メルマガ167号(1月12日付/もしも絶対に失敗しないなら)へ複数の方から同様の感想をいただき、伝えたつもりになっていたと思い知らされました。
「もしも絶対に失敗しないとわかっていたら、今年はどんな新しいことに挑戦したいですか?」との質問に対してのメッセージは以下。
・結果がわかっていることは、面白くもなんともない。
・絶対成功するのであれば、逆に挑戦するだろうか。失敗するかもしれないので、失敗しない ように頑張る。だからこそ成功したときの喜びが大きい。絶対に失敗しないのであれば、頑張らないのでは…
・挑戦は、結果が成功か失敗かわからないからするものでは?
私が伝えたかったのは、普通ならありえへん、と考えもしないことをできる限りあげてみると、あれ不思議。今の私って○○○に関心があるようだとか、体を動かすことに関してアイデアがたくさん出てくるぞとか。つまり普段ならできないというリミッターで遮られていた本当にやりたいことや関心あることが浮かび上がってくるのではとの思いから発した質問でした。ひいては、それが中長期での目標・課題設定の一助になるかもしれないとの思いによります。私の言いたいこと、伝わりましたでしょうか(汗)?
反省すべきは、背景の説明不足です。伝えたと一方的に思っているだけで相手には伝わっていませんでした。先の会長の回答みたい(笑)。あらためてコミュニケーションの難しさを実感しました。合わせて、フィードバックをもらえる互いの関係性の有無がつくづく重要だと思いました。先の例であれば、取材後に会長からIR担当者へ「取材(回答)で気づいたことある?」というほんの一言が決定的な違いになりますね。
ちなみに、当方の趣旨を理解くださった方より以下メッセージをあらためていただきました。
『板倉さんのお伝えになりたい意味がわかりました。(中略)
・軽自動車に家財道具を積んで、夫婦で日本中の温泉とお城を回りたい。
・東京じゅうのホームレスを一か所に集めきれいにして世に送り出すような施設を作りたい。
・町中のゴミや空き缶・ペットボトルを拾って回りたい。
・東京じゅうのボロ空き家、あるいはごみ屋敷を勝手にきれいにしたい。
・虐待にあっている小さな子を引き取って育てたい。
こんな考えがどんどん出てきました。どれもみな、実は普段から考えていることですが、予算や時間、体力や世間の目、後始末とかを気にして実行に移せないでいるものばかりです。(後略)』
心の中に抱いておられるのは社会貢献的な活動であり、かなり関心が高いことがわかります。今後、ここにあげて下さった項目がひとつでも実現できるといいですね。それでは、また来週!
2021年1月18日/168号 新区分の基準適合度は?
1月12日付メルマガ167号(もしも絶対に失敗しないなら)へ在米の方からメッセージいただきました。ありがとうございます。
『第一号も楽しく読ませて頂きました。有難うございます。日本が緊急事態宣言と言ってもレストランが8時に閉店になる程度ですよね?こちらでは、新しい変異種に皆恐れをなし、私はもう2週間スーパーにも行かないで済ませています。ニュージャージ州だけでも1日で新たな感染者が5600名にのぼり、カリフォルニア州では42,000人だそうで、気が遠くなりそうな数です。年末に年一回の検診に行った時、先生はワクチンが接種できるようになってはきていますが、私の年齢、健康状態、そしてエッセンシャルワーカーでないことなどを考え合わせると私の番が回ってくるのは「まあ、3月ですね。」と言われてしまいました。しかも、私立の医療機関では、効率よくワクチンを打っているようですが、州立などの公立医院ではエッセンシャルワーカー等、優先順位の高い人たち向けの枠があるのですが、接種されたくない人がそれなりに多く(当初、民主党の政治家がワクチンなんて信用できない、といった発言が多かった時期があった)逆に余ってしまい、ワクチンの効力期限を過ぎて捨てざるを得ない事態まで発生しています。(後略)』
昨年末に東証から新市場区分について「市場区分の見直しに向けた上場制度の整備について(第二次制度改正事項)」が公表されました。気をもみながら待っておられた方も多いはず。既にご覧になられていても、内容再チェックのひとつとして一読いただければ幸いです。
仮称であったプライム市場、スタンダード市場、グロース市場が正式に決まりました。ポイントは、やはり流通株式の定義(=計算方法)とそれに基づく流通株式時価総額と売買代金の計算期間ではないでしょうか。順番に見ていきたいと思います。
流通株式の定義
昨年2月 21 日公表の「新市場区分の概要等について(メルマガ129号、2020年3月20日付/新市場区分のここに注意!)」の中で政策保有株式等を流通株式から除外することは示唆されていたため、意外感はありません。が、細かく見ていくと流通株式数は想定以上に厳格に計算されることになります。具体的な計算式は以下です。➁④⑤に注意してください。
流通株式数=上場株式数-{①主要株主が所有する株式(10%以上所有)+➁役員等(役員以外
の特別利害関係者を含む)所有株式数+➂自己株式数+④国内の普通銀行、保険会社、事業法人等が所有する株式+⑤その他取引所が固定的と認める株式}
➁は流通株式の適用範囲の統一です。従来、役員以外の特別利害関係者(以下の(イ)(ロ)(ハ))は上場審査時のみ流通株式から除外していました。今後は上場後も除外するということです。
(イ)上場会社の役員の配偶者および二親等内の血族
(ロ)役員または前(イ)に掲げる者が議決権の過半数を保有する会社
(ハ)上場会社の関係会社およびその役員
④は今回追加されたもの。普通銀行には、信託銀行や信用金庫は含んでおらず、事業法人等は、金融機関及び金融商品取引業者以外の法人のことです。ただし、直近の大量保有報告書等で保有目的が「純投資」と記載されている株式については、流通株式として扱われます。当然のことではありますが、今回明確化されました。
⑤も今回追加されたものです。東証の言葉どおりに言えば「当取引所が流通株式に含めることが適当でないと認める株式には、上場基準の潜脱が行われたと認める株式などを含めることを想定しています」とあります。<潜脱>という意味からすると一見流通株式のようだが、法の網をかいくぐってそう見せている株式は除外するということ。このあたりにも取引所の強い気持ちが表れているようです。
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流通株式時価総額と売買代金の計算期間
流通株式時価総額を求める計算式は以下になります。移行基準日は2021年6月30日です。なお、他上場維持基準である株主数、流通株式数、流通株式比率は、直近の事業年度最終日時点の数値を適応します。
流通株式時価総額 =
流通株式数 × 移行基準日以前3か月間の東証での立会売買における日々の最終株価の平均値
*3か月間=2021年4月1日~2021年6月30日)
売買代金 = 移行基準日以前1年間の東証での立会売買での合計代金 ÷ その日数
*移行基準日以前1年間=2020年7月1日~2021年6月30日
これらを基に流通株式数を算出して流通株式時価総額が、そして従来の出来高数から売買代金が予想できます。それらを新市場の基準に照らしてみて、満たない項目についてのコーポレートアクションを考えることが必要になります。政策保有株式の多い企業やオーナー系企業には影響が大きいかもしれません。不明点や質問があればいつでもディア・マスターズへご相談ください。それでは、また来週!
2021年1月12日/167号 もしも絶対に失敗しないなら
今年初めてのメルマガです。本年もどうぞよろしくお願いします。年が明けて10日ほどですが、どんな新年を迎えられましたか?私は、予想通りの巣ごもり3が日を過ごし、先週からそろり仕事始めです。2021年は、還暦を迎えるのに加え、ディア・マスターズを設立して5年目の節目の年となります。今まで以上にお役に立てるようつとめを全うしてまいりますのでよろしくお願いいたします。
国内外で物々しい動きですね。コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからず、東京・神奈川・千葉・埼玉に対して2度目の緊急事態宣言が発動。米国ではトランプ支持者の連邦議会襲撃という、一瞬フェイクニュース?と疑ってしまうような事件まで発生しました。今年は一体どんな年になることやら。米ブラックストーンのウィーンさんが発表している「びっくり10大予想」をご存知の方も多いと思います。私も毎年楽しみにしているのですが、予想はこんなでした。(日経新聞1月6日付けNY特急便より)
1.トランプ氏が自身のテレビ局を立上げ、2024年選挙への出馬を計画
2.バイデン政権が、対中貿易関係の修復に着手、中国株が新興国市場をリード
3.5~10種類のワクチン成功などで、5月末までに米国は正常化
4.米司法省がグーグルとフェイスブックに対する態度を軟化
5.米成長率は6%を上回り、史上最長の景気拡大局面が始まる
6.FRBと財務省が緩和策継続。金や仮想通貨が上昇
7.原油価格が1バレル65ドルまで上昇
8.S&P500種が年前半に20%近く下落も、4500まで上昇
9.10年債利回りが2%に上昇。FRBは購入債券の年限長期化
10.ドル安が反転。欧州や日本の債務増や成長鈍化でドル選好の流れ
予想の定義は、平均的な投資家が発生確率を3分の1程度とみる出来事で、ウィーンさんは5割以上と予想するものをあげています。1.の目は、先ほどの襲撃事件後の展開しだいでついえるかもしれませんね。3.が起これば確かにポジティブサプライズ。5.もそうかな。8.は8日時点のS&P500種3824ゆえ、3000程度まで下落した後、4500へ駆け上がるということか。10.のドル安が反転も意外感有り…
今年1年でもこんな変化があるかもしれないのに、もっと大きな変化の流れに突入しているとしたらどうでしょう。GCって聞いたことありますか?CG=コーポレートガバナンスではありません(笑)。グレートコンジャンクション(以下GC)の略です。占星術に関心ある方なら間違いなく聞かれていると思います。GCは、昨年12月22日既に起きました。コンジャンクションとは天体が一列に並ぶ(重なる)こと。グレートは、社会や生活に影響を与える木星と土星が重なるから。この2つの天体が重なるのは周期上ほぼ20年に1回のことです。
GC自体が大きな変化になるのですが、これに加え更に大きな変化が生じています。GCが起った時の星座のエレメントが一変しているということ。これは約200年ぶりになります。意味するところは、今までのGCは「土」の星座(=おうし座、おとめ座、やぎ座)のもとで20年毎に起こっていました(厳密には、1981年に一度、てんびん座のもとでGCがあったがお試し的なもので、2000年のGCはおうし座へ戻っている)。それが先月のGCからキッチリ「風」の星座(=ふたご座、てんびん座、みずがめ座)へ切り替わったのです。
つまり、過去200年は「土」星座の時代だったのがこれから「風」星座の時代へ変わるということ。「土」星座の特徴は安定、堅実、経済的などですから、社会は物質的、均一・画一的、形式的、大量生産的なものでした。それが知性、理論、交流などを特徴とする「風」の社会になることで柔軟、変化肯定、対話等へ重きが置かれるようになるというのです。これを聞いた時、産業革命以降、ほぼ成長一本槍できた社会から多様性を受容しようとする社会へ大きく変わろうとする今の情勢は、これが背景にあったんだと。恐るべし占星術(笑)。誤解を恐れずに言えば、コロナ禍にはそれを加速する役割があり、にも関わらず変わることができなければ、人や社会にとってマズイ先行きが待っているのではないかと思えてしまいます。
最後に、次の質問へお答えください。
「もしも絶対に失敗しないとわかっていたら、今年はどんな新しいことへ挑戦したいですか?」
絶対に失敗しないわけなので、普段考えもしないような色んなことが思い浮かんできますよ。それをひとつでも実現できたらハッピーな年になるに違いありません。そんな1年にしたいものです。それでは、また来週!